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感じ方に「正解」はある?――自分の感覚を知るということ
同じ場所にいても、
「落ち着くな」と感じる人もいれば、
「なんだか居心地が悪い」と感じる人もいます。
同じ音楽を聴いても、
「心地いい」と感じる人もいれば、
「少しにぎやかだな」と感じる人もいます。
食べ物や飲み物でも同じです。
「甘い」と感じる人もいれば、
「それほど甘くない」と感じる人もいる。
私たちは同じものを見たり、聞いたり、味わったりしていても、必ずしも同じように感じているわけではありません。
では、その中で「正しい感じ方」はあるのでしょうか。
「普通はどう感じる?」を探してしまう
私たちは、ときどき自分の感覚よりも先に、
「普通はどうなんだろう」
と考えることがあります。
みんなが楽しそうだから、自分も楽しいはず。
人気のあるものだから、自分も好きなはず。
周りの人が気にしていないから、自分も気にしない方がいい。
もちろん、周囲の人の感じ方を知ることは大切です。
他の人の視点を知ることで、自分にはなかった考え方に気づくこともあります。
でも、そこで自分の感覚まで「間違っている」とする必要はありません。
まずは、
「私はどう感じているんだろう?」
と自分に問いかけてみる。
自己理解は、そんな小さなところから始めることができます。
感じ方が違うのは、おかしなことではない
人によって感じ方が違うのは、とても自然なことです。
これまで経験してきたことも違えば、大切にしている価値観も違います。
その日の体調や気分によっても、感じ方は変わります。
昨日は心地よかったものが、今日は少し疲れる。
以前は苦手だったものを、今は好きだと感じる。
そんな変化もあります。
つまり、自分の感覚は必ずしも「いつも同じ」ではありません。
だからこそ、
「私はこういう人間だから」
と決めつけるよりも、
「今の私は、こう感じているんだな」
くらいに眺めてみることも大切なのだと思います。
五感を使うと、自分の感覚が見えてくる
自分の感じ方を知るために、難しい心理分析が必要なわけではありません。
日常生活の中でもできます。
例えば、いつも飲んでいるコーヒー。
少しゆっくり飲んでみると、
「今日は香りが強く感じるな」
「このカップで飲むと、なんとなく落ち着く」
「いつもより苦く感じる」
など、いろいろなことに気づくかもしれません。
食事でも、音楽でも、散歩でも構いません。
見えるもの。
聞こえるもの。
香り。
味。
触れた感じ。
普段は通り過ぎている感覚に少しだけ意識を向けてみる。
すると、
「自分はこんなふうに感じていたんだ」
という発見が出てくることがあります。
感じたことを、すぐに評価しなくてもいい
ここでもう一つ、大切にしたいことがあります。
何かを感じたときに、
「こんなことで疲れるなんてダメだ」
「もっと楽しめるようにならないと」
「こんなふうに感じるのはおかしい」
と、すぐに評価しなくてもいいということです。
まずは、
「疲れたんだな」
「楽しかったんだな」
「これはちょっと苦手なんだな」
と、そのまま観察してみる。
理由を探すのは、そのあとでも構いません。
自分の感覚を否定せずに眺めてみることは、自分自身との付き合い方を知ることにもつながります。
他の人の感じ方を知ることも面白い
そして、自分の感覚が分かってくると、他の人との違いも少し面白く見えてくることがあります。
「私はこう感じたけれど、この人はそう感じるんだ」
どちらかが正しくて、どちらかが間違っている。
そう考えるのではなく、
「同じものを見ても、こんなに違うんだ」
と眺めてみる。
いろいろな感じ方があると知ることは、自分の見方を少し広げてくれることがあります。
そして同時に、
「では、私はどう感じる人なんだろう?」
と、自分自身を知るきっかけにもなります。
自己理解は、日常の中にある
自己理解というと、
自分の過去を深く振り返ったり、性格を分析したりするものだと思われるかもしれません。
もちろん、それも自己理解の一つです。
でも、もっと身近なところにも自己理解の入口はあります。
今日飲んだものをどう感じたか。
誰かと話して、どんな気持ちになったか。
どんな場所でほっとしたか。
何を見て、心が動いたか。
そんな小さな感覚を拾っていくことも、自分を知る作業です。
そして、それを積み重ねていくと、
「私はこういうものが好きなんだ」
「こういう環境だと落ち着くんだ」
「こういうときは少し疲れやすいんだ」
と、自分の輪郭が少しずつ見えてきます。
おわりに
感じ方に、一つの正解があるわけではありません。
他の人と違っていてもいい。
そして、昨日の自分と今日の自分が違っていてもいい。
大切なのは、「正しく感じること」ではなく、
自分がどう感じているのかに、少し気づいてみること。
もし今日、何かを飲んだり、食べたりするとき。
ほんの少しだけ、いつもよりゆっくり味わってみてください。
「おいしい」「苦い」だけではなく、
香りはどうだろう。
口に入れたときはどうだろう。
どんな気持ちになるだろう。
そこに出てきた答えは、誰かと同じでなくて構いません。
その小さな「私はこう感じる」の積み重ねが、自分自身を知ることにつながっていくのだと思います。